「よく頑張ったね」と言われたあとに来た400万円の請求——母の死後に知った現実
2026/03/30

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通帳を開いた瞬間、

何が起きているのか分からなかった。

見覚えのない請求書の束。

消費者金融、クレジット会社、保証会社。

数字だけが、やけに現実的だった。

合計、四百万円。

そして、その名義は——

全部、私になっていた。

その場で膝から崩れ落ちた。

三週間前まで、

私は母の介護をしていた。

九十を超えた母は、

認知症が進んでいた。

私の名前を間違えることもあった。

でも、

毎回、食事のたびに手を合わせて、

「ありがとう」と言った。

その一言に救われて、

私は毎日を耐えていた。

夜中に何度も呼ばれて、

オムツを替えて、

自分の生活なんて、後回しだった。

それでも、

「これでいい」と思っていた。

役所の手続きのとき、

親族は口を揃えて言った。

「大変だったね」

「よく頑張ったね」

でも——

誰も何も言わなかった。

借金のことも、

相続のことも。

私は知らなかった。

相続放棄には期限があることを。

三か月を過ぎれば、

借金もすべて引き継ぐことを。

その期限は、

もう過ぎていた。

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二週間前に。

その夜、

台所に一人で座っていた。

静かすぎる空間だった。

さっきまであった生活の音が、

全部消えていた。

私は小さく呟いた。

「もっと早く気づけばよかった」

それは、

母を見捨てればよかったという意味じゃない。

ただ——

自分の人生を、

全部使い切る前に、

一度立ち止まるべきだった。

そう思った。

優しさだけでは、

守れないものがある。

そのことを、

初めて知った。

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