担任から電話が来た。
「息子さん、毎週水曜日だけ遅刻しています」
高校一年の息子に聞いても、返事はそっけない。
「別に。ちゃんと行ってるから」
気になった私は、次の水曜日、少し離れて息子の後を追った。
すると息子は駅へ向かわず、団地の前で立ち止まった。
しばらくして、杖をついたおじいさんが出てくる。
息子は何も言わず、その人の歩幅に合わせてゆっくり歩き始めた。
向かった先は、デイサービスの送迎車。
職員さんが息子に言った。
「毎週、バスが来るまで一緒に待ってくれてありがとう」
帰宅後、理由を聞くと、息子は靴を脱ぎながら言った。
「あのおじいさん、小学生の頃、毎朝横断歩道に立ってくれてた人」
雨の日も、風の日も、息子が渡り終えるまで待ってくれた人だった。
「遅刻してまで行かなくてもいいでしょ」
そう言うと、息子は少し笑った。
「今度は、俺が待つ番だから」
私はそれ以上、何も言えなかった。