バスに乗った瞬間、私は少し息をつきながら周囲を見渡した。足に不自由があり、長時間立っているのは辛い。優先座席に目をやると、若い女子高校生たちが座っている。思い切って声をかけた。「すみません、足が悪いので席を譲ってもらえませんか?」
すると、一人の女子高校生が腕組みをして、明らかに面倒そうに言った。「なんであたし達が席譲らないといけないわけ?」その言葉に、周りの空気が少しざわつく。私は深呼吸して冷静に母子手帳を取り出し、障害者手帳を見せた。「これを見てください、私には立っているのが辛いんです。」
その瞬間、女子たちの態度が少し変わったかと思ったが、意外なことにまだ頑なだった。「でも、別に元気そうじゃん」「少しぐらい我慢できるでしょ」と口々に言う。私は目を伏せず、母の手を握りしめながら、内心で苛立ちを抑えた。
そのとき、バスの後方から一人の高校生が立ち上がり、にこやかに言った。「みんな、席譲ろうよ。
ルールってそういうものだよね?」すると他の乗客も次々と声をかけ、女子たちは次第に観念するように席を立った。母はゆっくり座り、私はホッと肩の力を抜いた。
まさか、優先座席の争いがこんな形で解決するとは思わなかった。しかし、この小さな勇気と周囲の協力がなければ、私たちは立ったままだっただろう。バスの中で起きたほんの数分の出来事が、私に人の優しさとルールの大切さを改めて教えてくれた瞬間だった。