
夏、家族で東北をドライブしていた。
俺がインプレッサを運転、助手席に父、後ろに母と姉。
山道を走っていると、後ろから走り屋っぽい車がベタ付けで煽ってきた。
面倒なので待避所に車を止め、先に行かせようとした。
――すると相手の車も後ろに止まり、男が二人降りてきた。
その瞬間、助手席の親父がゆっくりドアを開けて降りた。
スキンヘッド、サングラス、甚兵衛に下駄。
そして声デカめで一言。
「なんや、なんかあったんかい?」
すると――なぜか男たち、すぐ車に戻る。
俺も一応降りた。
念のため、車に積んでた短管パイプ持って。
相手の車の窓をコンコン叩いて、
無理に標準語で聞いてみる。
「すいません、なにかありましたか?」
ドアもガチャっと引いてみた。
ロックされている。
車内を見ると、男二人が完全に固まっている。
さっきまで煽ってた勢いはどこにもない。
後ろでは親父がタバコを吸いながらのんびりしている。
俺が何度か声をかけても、
相手はまったく出てこない。
数分後、親父が言った。
「もうええやろ、帰るで。」
俺たちはそのまま車に戻り、
普通に山道を走り出した。
さっきの走り屋の車は――
いつの間にか、
遥か後ろをチンタラ走っていた。
あの日一番修羅場だったのは、
たぶん後部座席で青ざめてた姉だったと思う。