焼肉食べ放題の店で、俺たちは思う存分食べていた。肉も野菜もバランスよく注文し、食べ残しもなく、むしろ「かなり綺麗に食べ切った方だよな」と満足しながら、会計へ向かった。
「そろそろお会計をしようか」
そう言った瞬間、店員が少し表情を曇らせて言った。
「追加料金があります」
俺たちは思わず顔を見合わせた。
「え?自分たちは食べ残しはしてませんが」
ルール違反もしていないはずだ。注文も適正、網の上も常に綺麗に使っていた。
店員は無言のまま、静かにテーブルへ視線を向けた。
「こちらをご確認ください」
そこにあったのは、想像していなかった光景だった。鉄板の周囲には大量の油が飛び散り、皿の一部は別テーブルのものと混ざっていた。さらに、追加で提供されていたはずの特製ソースが、なぜか過剰に消費され、テーブルクロスまで染みている。
しかし決定的だったのは、テーブル横に置かれた“破損した網交換記録”だった。
どうやら俺たちの前に座っていた客が、網を強く焦がし、その交換費用が未精算のまま残っていたらしい。
席の片付けが不完全なまま、俺たちが案内されていたのだ。
「これは前のお客様の分になります」
店員の一言に、空気が一気に変わった。
俺たちはようやく理解した。追加料金の正体は、俺たちの食事ではなく“前の客の痕跡”だったのだ。