結婚して初めてのお正月、私は夫の実家に集まる親戚のために、姑の言いつけで手作りのおせちを作った。けれど姑は、親戚に褒められる私が気に入らず、「最近はお取り寄せが便利よね」と笑顔で嫌味を言った。その時は笑ってやり過ごしたけれど、私はこの人の底意地の悪さを知った。
そして翌年のお正月。また親戚に頼まれて、私は夜遅くまで仕込みをして、おせちを持って夫の実家へ向かった。みんなは今年も楽しみにしていたと笑顔で迎えてくれた。ところが姑は、新年用に用意した家族の箸を並べながら、私の分だけないことを見せつけた。私が思わず「私の箸は?」と聞くと、姑はにっこり笑って言った。「家族以外の箸はいらないわよね。同居してない嫁なんて他人でしょ」
その場が凍りつく中、私は深呼吸して、風呂敷に包んだおせちを静かに持ち上げた。「家族じゃないので帰りますね」そう言って立ち上がると、夫もすぐに「俺も帰る」と私の隣に並んだ。親戚たちはざわつき、「おせちを楽しみにしていたのに」と残念がった。
すると、別居中だった義父が立ち上がり、姑に向かって言った。「今さら家族のふりをするな。親戚はみんな、とっくに別居も離婚拒否も知ってる」親戚たちも黙ってうなずき、次々に席を立った。私は夫と顔を見合わせてから、「よければ私の実家に来ませんか」と声をかけた。
急きょ二十人近くで私の実家に移動すると、両親も弟妹も快く迎えてくれた。私のおせちと母の手作り料理が並ぶと、みんなは笑って食べて、狭い家なのに温かい空気に包まれた。その後、義父は正式に離婚し、姑は大きな家も人のつながりも失った。
次のお正月。今度は私たちの家に家族や親戚が集まり、笑い声の中でおせちが空になっていった。その光景を見ながら私は思った。人が笑顔で集まる場所こそ、本当の家なんだと。