笑いながら言われた。
「値引きできないなら契約切るわ。町工場ふぜいが」
空気が一瞬で冷えた。
応接室で、叔父は何も言わず頭を下げていた。
でも俺の中では、完全に切れていた。
ここはただの町工場じゃない。
叔父が発明した特許モーター。
相手の会社は、そのモーターで全国12工場を回している。
つまり——
止めたら終わる。
でも、あえて言ってきた。
「三割引け」
理由はない。
ただの圧。
「無理なら契約終了」
そして最後に一言。
「底辺でも分かるだろ」
その瞬間、俺は決めた。
「値引きには応じません」
相手が笑う。
「じゃあ終わりだな」
だから俺も言った。
「はい、契約終了で」
その場で通知を出した。
特許使用、即時停止。
叔父も止めなかった。
むしろ静かに頷いた。
翌日。
全部止まった。
全国12工場。
ライン停止。
出荷停止。
現場パニック。
代替品は使えない。
制御が合わない。
つまり——
完全に詰み。
昼前から電話が鳴り続けた。
でも橋田じゃなかった。
社長だった。
「お願いします、撤回してください」
声が震えていた。
昨日までの態度とは別人だった。
応接室で再会。
今度は全員、頭を下げていた。
橋田もいた。
でも目が泳いでた。
俺は淡々と言った。
「条件があります」
・使用許諾の再契約
・特許使用料の支払い
・担当者の交代
社長は即答した。
「受けます」
橋田が口を開きかけた。
その瞬間。
「黙れ」
社長の一言で止まった。
さらに叔父が言った。
「そもそも、今までタダだったんだ」
空気が止まった。
そう。
5年間、使用料ゼロ。
前社長との約束だった。
つまり相手は——
タダで使い続けて、さらに値切ろうとした。
社長の顔色が変わった。
完全に理解した顔だった。
そして、もう一つ。
俺は静かに出した。
証拠。
橋田の別件。
社内女性へのストーカー行為。
画像も揃っていた。
社長は即決した。
「橋田は外す」
その場で終わった。
降格。
左遷。
すべて一瞬だった。
その後、工場は復旧した。
でも失ったものは大きい。
信用。
時間。
そして橋田の立場。
俺は現場に戻った。
油の匂いの中で思った。
町工場は小さい。
でも——
技術と約束は、小さくない。
見下したやつほど、最後にそれを思い知る。