70歳のさやは、朝の静かなリビングで通帳を見つめ、深いため息をついていた。夫婦の年金は月22万円。決して少なくないはずなのに、貯金は毎月減っていく。週1回のパチンコ、つい立ち寄るコンビニ、月8000円のスマホ代、見もしない動画配信サービス。どれも「これくらい普通」と思っていたが、不安だけは消えなかった。
そんなある日、同級生のと子と喫茶店で再会する。と子も同じ70代、年金額も大差ない。それなのに表情は穏やかで、暮らしに余裕があるように見えた。
「私ね、お金に不自由しないために、“絶対にしないこと”を5つ決めているの」
さやは思わず身を乗り出した。
1つ目、ギャンブルをしない。
「70代は増やす時期じゃなく、守る時期よ」
月2万5000円のパチンコと宝くじは、10年で300万円になる。
その言葉に、さやは胸を突かれた。
2つ目、固定費を放置しない。
スマホ、保険、サブスクは年1回見直す。と子はスマホ代を8000円から2000円に下げ、不要な契約も解約していた。
3つ目、コンビニ通いをしない。
便利さの裏で、ついで買いが増える。と子は週1回、買い物リストを作ってスーパーでまとめ買いし、食費を抑えていた。
4つ目、見た目だけでお金を使わない。
壁紙より雨漏り修理、飾りより機能。さらに工事は必ず相見積もりを取る。これだけで大きな差が出るという。
5つ目、無理な付き合いをしない。
祝儀を多めに包む、気乗りしない会合に参加する――それは見栄の出費。本当の友人なら、年金生活だと正直に話せば理解してくれる。
その夜、さやは勇気を出して夫に通帳を見せた。怒られると思った。しかし夫は静かに言った。
「一人で抱え込んでいたんだな。これからは一緒にやろう」
さやの目から涙があふれた。
半年後、貯金が急増したわけではない。だが減る速度は止まり、心の不安も薄れていた。パチンコはやめ、夫と散歩する時間が増えた。毎月二人で通帳を見るたび、安心感が積み重なっていった。
70代でお金に不自由しない人は、特別に稼いでいるわけではない。やらないことを決めている人なのだ。