「ゆみか、ちょっといい?」
母から電話が来たのは、
仕事終わりだった。
嫌な予感しかしなかった。
案の定、
話題は“仕送り”だった。
「来月から給料日が5日に変わるの」
私はそう説明した。
今までは25日支給だったけど、
会社の都合で変更になる。
だから今月だけ、
25日に5万円。
5日に残り10万円と、
少し多めに2万円追加で送るつもりだった。
でも母は、
信じられないことを言った。
「だったら25日に15万円、
5日にも15万円送りなさい」
私は固まった。
「それ、
月30万円になるよ?」
すると母は当然のように言った。
「じゃあ今後は毎月30万円ね」
頭が痛くなった。
私は深呼吸して言った。
「無理だよ」
その瞬間、
母の声色が変わった。
「今まで育ててやった恩を忘れたの?」
私は思わず笑いそうになった。
育てた恩。
その言葉、
何百回聞いただろう。
母は昔からそうだった。
自分の機嫌が悪くなるたび、
「誰のおかげで生きてこれたと思ってるの」
そう言って、
私を黙らせてきた。
しかも兄には異常に甘かった。
兄は実家暮らし。
私より稼いでいる。
なのに、
一円も家に入れていない。
でも母は平然と言う。
「お兄ちゃんは交際費が必要なの」
「友達いないお前より大変なのよ」
私は呆れてしまった。
私は毎月15万円。
兄はゼロ。
それでも私だけが責められる。
数日後。
25日の仕送り日。
私は予定通り5万円だけ振り込んだ。
すると即LINE。
「残り10万円まだ?」
「今日は15万円って言ったでしょ?」
私は説明した。
でも母は聞かない。
「5日に25万円振り込みなさい」
「できないなら、
こっちにも考えがある」
正直、
この辺りからもう限界だった。
そして翌月5日。
私は12万円だけ振り込んだ。
するとまた母から怒涛のLINE。
「なんで25万円じゃないの!?」
「ペナルティを考えてるから!」
ペナルティって何。
本気で意味が分からなかった。
でも数日後、
その意味が分かった。
「お前とは絶縁です」
突然、
母からそう送られてきた。
しかも、
“家族会議で決定した”
らしい。
もちろん参加者は、
母と兄だけ。
私は完全に笑ってしまった。
すると母は続ける。
「引っ越したわ」
「住所を知りたければ、
月30万円払いなさい」
もう意味不明だった。
絶縁したいのか、
金が欲しいのか、
どっちなの。
その数時間後だった。
兄の元彼女から、
突然連絡が来た。
「助けてください」
話を聞いて、
私は頭を抱えた。
母と兄、
その元彼女のマンションへ
勝手に住み始めていた。
しかも、
別れたあと返したはずの鍵を、
兄が勝手に複製していたらしい。
仕事から帰ったら、
リビングで母と兄がくつろいでいた。
想像しただけで怖い。
しかも母は、
元彼女に向かって言ったらしい。
「今日から同居ね」
「私たちを養いなさい」
私は思わず言った。
「うち来ます?」
すると彼女は、
泣きそうな声でありがとうと言った。
その三日後。
母からまたLINE。
「まだ30万円振り込まないの?」
私はため息をつきながら返した。
「ちょうど良かった」
「私も引っ越すね」
すると母は勝ち誇った声になる。
「引っ越し先知りたいんでしょ?」
私は静かに言った。
「別に」
そして続ける。
「そのマンション、
あと10日で契約終了だってね」
母は黙った。
さらに私は追撃した。
「あと、
前のアパート家賃滞納してたよね」
実は大家から、
私へ請求が来ていた。
私は迷惑をかけたくなくて払った。
でもその瞬間、
完全に吹っ切れた。
母は、
私の仕送りを借金返済に使っていた。
兄は会社をクビになっていた。
さらに損害賠償まで抱えていた。
だから急に、
30万円なんて言い出したのだ。
私は最後に言った。
「もう仕送りしなくていいよね?」
「絶縁なんでしょ?」
母は慌てた。
「それはなしにしてあげるから!」
でも私はもう笑うしかなかった。
「私は絶縁で全然いいけど」
さらに兄の元彼女から、
伝言を預かっていた。
「明日までに出ていかなければ警察呼びます」
当然だった。
不法侵入だ。
母は取り乱した。
「行く場所ないのよ!」
でも私は冷たく返した。
「知らない」
「さようなら、元お母さん」
その後、
私はセキュリティの強いマンションへ引っ越した。
実は私、
月60万円近く稼いでいる。
だから15万円の仕送り自体は、
払えない額じゃなかった。
でも、
知られたら最後だった。
母と兄は、
一生たかってきただろう。
だから私は、
この先も絶対に教えない。
後日、
母と兄は警察沙汰になり、
親戚の家へ引き取られたらしい。
今は、
朝から晩まで働かされ、
借金返済に追われているそうだ。
でも私は、
もう何も感じない。
だって、
家族を壊したのは私じゃない。
“娘をATM扱いした人たち”の方だから。