今日もドア位置を変えて座ったのに、また同じ妊婦さんが目の前に立った。
本を読んで下を向いていると、肩をトントン。
「席を譲って下さい」
私は顔を上げて、はっきり答えた。
「嫌です」
すると隣のおじさんが、正義感たっぷりに言ってきた。
「譲ってやれば?」
だから私はそのまま返した。
「あなたが譲れば?」
一瞬、空気が止まった。
さっきまで口だけ立派だったおじさんは、なぜか自分の席から動かない。
妊婦さんもおじさんも何か言っていたけれど、私は完全に無視した。
優しさは大事。
でも、自分は何もしない人に限って、他人の善意だけを勝手に差し出そうとする。
本当に譲りたいなら、まず自分が立てばいい。