義兄・健太の葬儀の最中、読経をしていた僧侶が突然私のそばに来て、小声で「今すぐ帰りなさい。こんなことは坊主人生で初めてですが、あなたの家が危険です」と告げた。
私は驚きながらも、その切迫した表情に押されて夫に先に帰ると伝え、急いで自宅へ向かった。
家に着くと、玄関の鍵穴にはこじ開けようとした傷があり、扉の鍵も開いていた。
恐る恐る中へ入ると、書斎の引き出しが荒らされ、床には書類が散乱していた。
そしてその中心にいたのは、義兄の妻・みさ子だった。
みさ子は私に見つかると逆上し、「健太の遺言書の原本を探している」と叫んだ。
弁護士から渡されたコピーには、財産も保険金もすべて弟である夫に譲ると書かれていたからだ。
さらに彼女は、夫宛ての封筒を勝手に開け、中にあった手紙と保険金受取人変更の書類を破ろうとした。
私は必死で止め、その直後に駆けつけた警察にみさ子は不法侵入で連行された。
その後、法務局で義兄の正式な遺言書を確認すると、そこには「妻みさ子が食事に洗剤など体に悪いものを混ぜ、健康を著しく害したため、一切相続させない」とはっきり書かれていた。
警察の捜査で、みさ子のメモ帳や隠しカメラの映像も見つかり、彼女が保険金目当てで義兄を長期間苦しめていたことが判明した。
義兄は最後に弟へ謝罪の手紙を残し、全財産と保険金を夫に託していた。
裁判でみさ子の相続権は否定され、夫は長年背負わされた借金から解放された。
そして一年後、私たちは義兄の名を冠したカフェを開き、新しい命も授かった。
あの日の僧侶の警告が、私たちの人生を救ってくれたのだった。