ある日、母親は14歳の娘と雑貨屋へ行った。
娘が消しゴムを欲しがったため、母親は財布から一万円札を渡した。
しばらくして娘が戻ってきた。
しかし、お釣りは800円ほどしかなかった。
娘は消しゴムしか買っていない。
不審に思った母親は、すぐ店員へ声をかけた。
すると店員はレジを確認しながら、
「売上金額も釣り銭も合っています。お客様の勘違いではありませんか」
と説明した。
母親は、自分は絶対に一万円札を渡したと信じ込んでいた。
さらに店員の素っ気ない態度に腹を立て、
「あんたが盗ったんだろ!お金を返して!」
と大声を上げてしまう。
騒ぎを聞きつけた警備員が駆けつけ、双方をなだめ始めた。
しかし言い合いが続くうち、店員も感情的になり、
「いい加減にしろ!返金詐欺だぞ!」
と怒鳴った。
その瞬間、娘が泣き出した。
「お母さんごめん…私のせいだ…」
娘の姿を見た警備員は店員へ、
「お客様を何だと思ってるんだ」
と注意した。
すると店員は泣きながら自分の財布から一万円札を出し、
「これで満足か、詐欺師!」
と言い残し、バックヤードへ消えた。
母親は重い気持ちのまま帰宅した。
娘は、
「お金返ってきたし、もうあの店行かないよ」
と母親を慰めた。
その後、母親は本社へクレームを入れた。
しかし納得できる対応は得られなかった。
そして翌月。
家計簿をつけていた母親は、自宅の金額が一万円多いことに気づく。
その瞬間、血の気が引いた。
間違っていたのは自分だったのだ。
店員は正しかった。
母親は、自分が娘の前で店員を罵倒し、追い詰めたことを思い出した。
だが今さら真実を言い出せず、この秘密は墓場まで持っていこうと決めた。