新幹線の通路に、ベビーカーが大きく広げられたまま置かれていた。
母は足が悪く、杖をつきながらゆっくり通ろうとした。
しかし母親はスマホを見たまま、
「赤ちゃん寝てるから畳めません」
と一言。
次の瞬間、母の杖がベビーカーの車輪に引っかかり、体が大きく傾いた。
慌てて支えた私の横を、車掌が何事もないように通り過ぎる。
さすがに我慢できず、私は声を上げた。
「赤ちゃんが大事なのは分かります。でも、通路を塞いで誰かが転んだら、その責任は誰が取るんですか?」
車内が一瞬で静まり返った。
すると近くにいた男性客が立ち上がり、
「ここ、避難通路でもありますよね」
と車掌に確認した。
その一言で車掌の顔色が変わった。
母親もようやくベビーカーを移動させた。
母は小さく「ありがとう」と言った。
赤ちゃんへの配慮は大事。
でも、それを理由に他人の安全を無視していいわけじゃない。