娘が2歳のとき、離婚した。
理由はシンプルだった。
元妻の不倫。
何度も話し合った。
やり直そうともした。
でも無理だった。
最後に離婚を選んだのは、元妻だった。
それから数年。
娘と二人で生きてきた。
正直、大変だった。
でも、娘の笑顔があれば何とかなった。
そんなある日、連絡が来た。
元義両親からだった。
「お願いだから、一度来てほしい」
ただ事じゃないと思った。
そして聞かされた。
元妻が亡くなった、と。
頭が追いつかなかった。
恨みもあった。
でも同時に、娘の母親だった。
だから行くことにした。
元義実家に入ると、空気が重かった。
写真が置かれていた。
あの人の顔だった。
元義母が言った。
「来てくれてありがとう」
声が震えていた。
そして元義父が言った。
「最後に言ってたんだ」
少し間を置いて続けた。
「娘のことは、あなただから安心できるって」
その言葉で、胸が詰まった。
正直、意外だった。
あの人がそんなことを言うとは思ってなかった。
そのあと、遺品整理を手伝った。
そこで見つかった。
一通の手紙。
俺宛だった。
震える手で開いた。
そこに書いてあったのは——
謝罪だった。
「あなたを傷つけたこと、本当に後悔してる」
そして最後に書いてあった。
「娘をお願いします」
それを読んだ瞬間、涙が出た。
怒りでもなく、恨みでもなく。
ただ、終わったと思ってたものが、
ちゃんと終わってなかったことに気づいた。
元義母が言った。
「ずっと気にしてたのよ」
その言葉で全部つながった。
あの人は逃げた。
でも、全部捨てたわけじゃなかった。
少なくとも、娘のことだけは。
帰り際、元義父が言った。
「これからも会いに来ていいか」
俺は迷わなかった。
「もちろんです」
家に帰って、娘の顔を見た。
何も知らずに笑っていた。
その顔を見て思った。
過去は変えられない。
でも、残されたものはある。
あの手紙で、全部許せたわけじゃない。
でも——
前に進める理由にはなった。
それだけで十分だった。