郵便受けを開けた瞬間、嫌な予感がした。
妙に整った字の封筒。
差出人は、夫。
しかも消印は観光地。
……出張じゃなかったのね。
中を開けた。
写真が落ちた。
知らない女と、夫。
笑ってる。
楽しそうに。
その下に、離婚届。
一瞬で理解した。
これ、脅しだ。
「離婚するぞ」じゃない。
「どうせ出さないだろ?」っていうやつ。
泣くと思ってる。
縋ると思ってる。
でもその時、私は逆だった。
冷めてた。
完全に。
「……出せばいいのね」
そのまま書いた。
迷いなし。
考える時間もいらなかった。
役所まで歩いた。
提出した。
終わり。
たったそれだけ。
帰って、必要なものを全部まとめた。
通帳、印鑑、書類。
冷静だった。
むしろスッキリしてた。
3日後、引っ越した。
誰にも言ってない。
夫にも、何も。
そして夜。
スマホが鳴った。
夫。
出ない。
でも止まらない。
メッセージが来る。
『どういうこと?』
『離婚届って何?』
『まだ話してないだろ』
……は?
ここで全部分かった。
こいつ、本気じゃなかったんだ。
出す気ゼロの離婚届。
脅し用。
主導権取りたかっただけ。
でも私は、出した。
だから全部崩れた。
『冗談だったのに』
その一文で確定した。
本当に、全部。
私はブロックした。
必要な連絡は全部、弁護士。
もう直接話す必要ない。
その翌日。
チャイムが鳴った。
荷物。
差出人、夫。
中身。
指輪と謝罪文。
……遅い。
本当に、それだけだった。
私は開けずに返送した。
あの時、夫は賭けてたんだと思う。
私がどう動くかに。
でも残念だったね。
私はもう、そこにいない。
2秒で終わった結婚。
でもそれでよかった。
あのまま続けてた方が、よっぽど無駄だった。