私は数年前まで助産師として働いていました。ある日の両親学級で、妊婦体験をしていた若い夫が、楽しそうに飛び跳ねているのを目にしました。「こんなの余裕じゃん」と笑う彼の姿に、正直イラッとしました。お腹の中には赤ちゃんがいるのに、その無神経さに内心「本当に大丈夫?」とつぶやかずにはいられませんでした。
そして出産当日。奥さんが必死に陣痛に耐えている最中、彼はタバコ休憩を取りに行こうとします。「奥さんが頑張っているのに…!」と、プロとしての笑顔の裏で思わず苛立ちが込み上げました。結局、奥さんは無事に元気な男の子を出産しましたが、その直後、彼女は小さくつぶやきました。「もう、この父親は必要ないかもしれない」――その言葉に、彼の態度がどれほど心に重くのしかかっていたかを実感しました。
彼女は赤ちゃんを抱え、一人で退院しました。最初は不安そうでしたが、数週間後の検診では、明るい笑顔を見せてくれました。夫が無神経でも、母としての強さと愛情で赤ちゃんを守る彼女の姿に、私は深く胸を打たれました。
今でも、あの親子が幸せに暮らしていることを心から願っています。妊娠・出産は二人で迎えるもののはずですが、時に母親の強さだけが子どもを支える力になる――そんな現実を痛感した出来事でした。