私の通っていた高校には、今では信じられないような校則があった。
女子の髪は肩についたら結ぶこと。前髪は眉にかからないこと。髪ゴムは黒か紺のみ。少しでも乱れていれば、廊下で教師に呼び止められる。
ある日の朝、私はいつも通り登校した。けれどその日、体育のあとで髪が少し崩れていたらしい。
生活指導の教師が私を見るなり、眉をひそめた。
「だらしない。校則違反だ」
そう言うと、私の髪をいきなり後ろから引っ張った。
痛みで涙がにじんだ。周りの生徒も驚いていたが、誰も声を出せなかった。私はその場で泣いてしまった。
帰宅後、父に話すと、父は顔色を変えた。
「それは指導じゃない。抗議しよう」
すると、隣で聞いていた祖父が静かに言った。
「明日は、おじいちゃんが学校へ行く」
私は驚いた。
「なんでおじいちゃんが?」
祖父は、昔その学校の教師だった。しかも、今の校長が新人だった頃の恩師でもあったのだ。
翌日、祖父はきちんと背広を着て学校へ向かった。
私も父も一緒だった。
校長室に入ると、校長の顔色が変わった。
「先生……」
祖父は静かに言った。
「髪を整える指導と、子どもの体に手をかけることは違います。あなたの学校は、いつから痛みで生徒を従わせる場所になったのですか」
校長は何も言えなかった。
その後、教師から正式な謝罪があり、髪型指導の方法も見直された。校則そのものも、生徒会を交えて再検討されることになった。
あの日、祖父が怒鳴ることは一度もなかった。
けれど、その静かな一言は、どんな大声よりも学校に響いた。