朝、スマホを見ると、上司から留守電が入っていた。
「おーい、どしたw 今日休みじゃないぞーw」
寝ぼけた頭が、一瞬で冷えた。
今日は有給のはずだった。前の週に勤怠管理システムから申請し、画面にも「申請済み」と表示されていた。旅行の予定こそなかったが、久しぶりに何もしない一日を過ごすつもりで、前日から楽しみにしていたのだ。
慌ててパソコンを開き、勤怠システムにログインした。すると、私の申請欄には確かに有給申請が残っていた。だが、状態は「承認待ち」のまま。
「は?」
私は思わず声を出した。申請は出していた。締切も守っていた。なのに、上司が承認を放置していたのだ。
すぐに上司へ電話をかけた。
「有給申請、先週出しています。まだ承認待ちになっていますが」
すると上司は、軽い調子で言った。
「あー、見てなかったわ。まあ、承認されてないなら休みじゃないよね」
その言い方に、胸の奥が冷たくなった。
見ていなかったのは上司だ。なのに、なぜこちらが無断欠勤のように扱われなければならないのか。
私は電話を切ったあと、申請日時が分かる画面をスクリーンショットし、人事へメールを送った。件名は「有給申請の承認遅延について」。申請日、上司からの留守電内容、現在のステータスをすべて添えた。
その日の昼、人事から返信が来た。
「申請は期限内に提出されています。承認処理の遅れは管理者側の対応漏れです。本日は有給扱いとします」
さらに、上司にも正式に注意が入ったらしい。
夕方、上司から短いメッセージが来た。
「ごめん、こっちの確認漏れだった」
私は画面を見て、静かに息を吐いた。
曖昧な口約束なら、きっと丸め込まれていたかもしれない。けれど、システムに残った記録は嘘をつかない。
その日以来、私は有給申請を出すたびに必ずスクリーンショットを保存している。
会社で自分を守るのは、感情ではなく記録だと、あの日はっきり学んだ。