新幹線の指定席で、私は疲れて座席に腰を下ろした。その瞬間、目の前の席には小さな子供を連れた親子が座っていた。私は軽く声をかける。「すみません、その席、私のです。」
父親は少し眉をひそめて答えた。「ここは自由席ですよ。」
私はチケットを提示しながら冷静に言う。「違います、指定席です。」
彼の表情が一瞬固まったが、すぐに口を開いた。「でも子供が寝ているんです。移動させられません。」
私は内心で小さくため息をついた。寝ているのは理解できる。しかし、それは他人の権利を無視して良い理由にはならない。「すみません、でもこの席は私のチケットです。チケットをご確認ください。」
列車の発車間際、子供がうとうとしている親子の様子を見ながらも、私は動じずに立ち続けた。周囲の乗客もちらりとこちらを見ている。
父親は困惑した様子で、子供を抱きかかえながら立ち上がる。
そして発車の直前、父親は立ち上がりながら私に向かって小さな声で言った。「わかりました、すみません。」
親子は通路に移動し、やむなくUターン。私の座席は守られ、静かに安堵の息をついた。
列車が滑り出す中、父親は背を向けながらも、「見ろ!」と小さな声で子供に話しかける。その声はわずかに悔しさを含んでいたが、私は微笑みを浮かべ、心の中でこう思った。ルールを守ることが最終的には一番安全で、公平なのだと。