バスの中で、ベビーカーを押した若いお母さんが乗ってきた。
車内は少し混んでいて、通路も狭い。
すると近くの女性が聞こえるように言った。
「ベビーカー、たためばいいのに」
「混む時間に乗るなんて迷惑」
お母さんは申し訳なさそうに小さくなり、赤ちゃんをあやしていた。
その時、優先席に座っていたおばあさんが静かに立ち上がった。
そして文句を言った女性に向かって言った。
「こちらに座りなさい。赤ちゃんより、あなたの方が癇癪を起こしているみたいだから」
車内が一瞬で静まった。
女性は顔を赤くして、何も言えず離れていった。
おばあさんはお母さんに優しく笑った。
「子育ては大変。でも大丈夫。みんな昔は、誰かに育ててもらったのよ」
その言葉に、お母さんは涙ぐみながら頭を下げた。