駅の階段をゆっくりと上っていた私は、妊娠八か月。
お腹が大きく、足元もふらつきがちだったが、周囲の視線を気にして、なんとか自分のペースで歩いていた。
しかし、突然背後から声が飛んだ。
「とっとと歩けっ!」
振り返ると、制服姿の女子高生――明らかにDQN系――が、不敵な笑みを浮かべながら近づいてきた。次の瞬間、彼女は私のブラジャーの肩紐を掴み、強引に引っ張ったのだ。
「うわっ!」
私はバランスを崩し、階段の一段目、二段目と滑り落ちそうになった。心臓が凍る思いだった。お腹の中の赤ちゃんも、恐怖でかすかに動くのが分かる。
周囲の人々が慌てて駆け寄る中、私は必死で手すりにつかまり、何とか転倒を免れた。女子高生は笑いながらその場を去ろうとする。しかし、私はそのまま黙っていられなかった。
「ちょっと待ちなさい!」
大声で呼び止め、近くにいた駅員を指さした。
彼女は驚いた様子で振り返る。駅員が駆けつけると、女子高生の態度は一変した。言い訳もできず、しばらく固まったまま動けない。
私は深呼吸し、落ち着きを取り戻すと、周囲に向かって言った。
「妊婦でも、誰でも、暴力や嫌がらせを受ける権利はありません」
その言葉に、駅員や通行人たちはうなずき、女子高生もようやく事情を説明するように促された。私はその場を離れながら、胸の奥で思った――力で威圧する者には、必ず制裁が訪れる。そして、弱い立場だからこそ、冷静に守る勇気が大切なのだ、と。