中学二年生の娘が、今日の夕食を見て眉をひそめた。
「クソマズいご飯作りやがって!」
その言葉に、私はしばらく言葉を失った。しかし、感情に流されて怒るよりも、冷静に受け止めることにした。
「そうですか。二度と食べないでください。結構です」
娘は意に介さず、軽く肩をすくめて言った。
「いいよ別に!弁当買ってくるから!」
その場はそれで終わったかに見えた。私は静かに自分の食器を片付け、心の中で「好きにして」と思った。しかし、しばらくすると、家の外から妙な音が聞こえてきた。
「カチャ…カチャ…」
娘が買ってきた弁当を開ける音だろうか。しかし、いつもと違う、何か不穏な空気が漂う。私はそっとキッチンのドアを開けて、リビングを覗いた。
そこには、娘が弁当のふたを開けて、真剣な表情で何かを書き込んでいる姿があった。よく見ると、それは「味の改善レポート」のようなもので、どの料理がまずかったか、どうすれば美味しくなるか、細かくメモがされていたのだ。
「これ、食べてみて。改良してみたから」
娘は少し照れくさそうに、私に差し出した。驚きと同時に、少し笑いがこみ上げる。憎たらしい言葉を吐いたあの娘が、こうして自ら工夫して私に料理を差し出すとは。
私はその弁当を手に取り、感謝の気持ちを込めて一口食べた。すると、思ったよりずっと美味しい。娘の努力と愛情が、味に溶け込んでいた。
その夜、私は静かに思った。思春期の子どもは口が悪くても、心の奥底ではちゃんと愛情を示そうとしているのだと。そして、母と娘の関係は、こうして少しずつ成長していくのだ、と。