息子を出産した翌日、病室に義兄嫁が見舞いに来ました。
「赤ちゃん、抱っこしてもいい?」
そう言われ、私は疲れた体を起こしながら息子を渡しました。
最初はただ可愛がってくれているだけだと思っていました。
しかし義兄嫁は、息子を抱いたままなかなか離そうとしませんでした。
「そろそろ授乳なので」と私が声をかけても、「もう少しだけ」と笑って腕の中に抱きしめたまま。
その日だけなら、まだ我慢できたかもしれません。
けれど次の日も、その次の日も、面会時間になると義兄嫁は真っ先に病室へ来て、当然のように息子を抱き上げました。
私が抱こうとすると、少しだけ顔を曇らせるのです。
「私の方が抱き慣れてるから」
その一言で、胸の奥に冷たいものが走りました。
夫に相談すると、夫もさすがに様子がおかしいと気づきました。
そして退院前日、義兄嫁は息子を抱いたまま小さな声で言いました。
「この子、うちに来てくれたらいいのに」
その瞬間、私ははっきりと言いました。
「この子は私の息子です。もう抱かせません」
病室は静まり返りました。
夫が義兄に連絡し、看護師さんにも事情を伝えると、義兄嫁の面会は制限されました。
後で聞いた話では、義兄嫁は長く子どもに恵まれず、気持ちの整理がつかないまま私の出産を見てしまったそうです。
同情する気持ちはありました。
けれど、母親になったばかりの私から息子を奪うような言動を、許すことはできませんでした。
退院の日、息子をしっかり胸に抱いた私は、ようやく心から思いました。
守るべきものができた母親は、もう遠慮だけでは生きていけないのだと。