旦那の実家に行ったら草の根を食べさせられそうになった。トメの目の前でわざと旦那のお椀に移したら...
2026/07/05

広告

義実家に行ったとき、出された鍋の中に見慣れない草の根のようなものが入っていた。

何か分からないまま、義母は当然のように私の器によそってきた。

断れる空気ではなく、そのまま口に入れるしかなかった。

義母は満足そうに私を見ていた。

その視線が少しだけ引っかかった。

私は何も言わず、隣にいた夫の椀へ、その具材をそっと移した。

夫は一瞬だけ顔をしかめたが、何も言わずに食べた。


その後、義母がいない場所で夫に言った。

「今の、普通じゃなかったよね」

夫は少し困った顔をしたまま視線をそらした。

「……母さんは昔からああいう感じだから」

「でも、あれってちょっと変だと思う」

「考えすぎじゃない?」

短い沈黙だけが残った。


結婚式のときも同じだった。

海外で式を挙げたいと言ったとき、義父に強く反対された。

夫も深くは踏み込まず、「こっちのやり方があるから」とだけ言った。

その時から、私は少しずつ違和感を覚えていた。


そして今回も同じだった。

広告

義母は何も強くは言わない。

ただ、視線と沈黙で圧をかけてくる。

夫はそれを「普通」として受け流している。


私はその夜、少しだけ考えたあと、静かに言った。

「ねえ、さっきの鍋、ちょっとおかしくなかった?」

夫はすぐには答えなかった。

少し間を置いてから言った。

「……あれは、田舎だと普通だよ」

その言葉で、空気が一瞬止まった。


私は何も言い返さなかった。

ただ、翌朝、義実家を出るとき。

義母が玄関で軽く笑いながら言った。

「まあ、都会の人にはちょっと珍しいかもね」

私は一度だけ振り返って、ゆっくり言った。

「そうですね。でも次は、同じもの出すなら一言ください」

一瞬、義母の表情が止まった。

夫も横で黙っていた。


車に乗ったあと、夫がようやく口を開いた。

「……あんな言い方する必要あった?」

私は窓の外を見たまま答えた。

「じゃあ、どう言えばよかったの?」

夫は何も言えなかった。


帰り道、私は思った。

“黙ること”は優しさじゃない。

“我慢すること”は理解でもない。

少なくとも、あの家ではそうだった。

そして私は初めて、ほんの少しだけ呼吸が楽になった気がした。

広告

AD
記事