娘の百日祝いの日だった。
両家の家族だけで集まり、娘の健やかな成長を祝う大切な日。
料理の準備も終わり、ようやく一息ついた頃だった。
突然、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろう?」
そう思いながらドアを開けた瞬間、私は言葉を失った。
そこに立っていたのは義姉だった。
しかも、見たこともない真新しい外車で乗り付けてきている。
思わず車と義姉の顔を何度も見比べた。
なぜなら、この人は私が出産した時、
「うちは今余裕がないの」
そう言って出産祝いを一切くれなかった人だからだ。
もちろん、お祝いが欲しかったわけじゃない。
事情があるなら仕方ない。
そう思っていた。
でも、目の前には新車の高級外車。
正直、複雑な気持ちになった。
さらに驚いたのは、義姉が手ぶらだったことだ。
紙袋一つ持っていない。
赤ちゃんへのプレゼントもない。
私は嫌な予感がした。
そしてその予感は見事に当たった。
義姉は当然のような顔で家に入り、並べられた料理を見回した。
その後、不機嫌そうに眉をひそめて言った。
「え?なんでうちの分のお膳がないの?」
一瞬、耳を疑った。
出産祝いはなし。
招待もしていない。
それなのに、自分の席が用意されていると思っていたらしい。
部屋の空気が一気に凍り付いた。
後から聞いた話では、義母が勝手に百日祝いの日程を教えていたらしい。
義母としては家族だからと思ったのかもしれない。
でも私からすれば迷惑以外の何物でもなかった。
その場で何も言えずにいると、義父が静かに立ち上がった。
そして義姉に向かって言った。
「お前は呼ばれてないだろう。帰りなさい」
普段は温厚な義父だったが、その時だけは本当に怒っていた。
義姉は不満そうな顔をした。
しかしさすがに居づらくなったのか、渋々帰ることになった。
私は少しホッとした。
これでせっかくのお祝いを続けられると思った。
ところが、最後にさらに信じられないことが起きた。
私の母が、
「せっかく来たんだから」
と気を遣い、実家側で用意していた引き出物を義姉に渡したのだ。
私は思わず固まった。
普通なら断るだろう。
少なくとも遠慮するだろう。
ところが義姉は何の躊躇もなく受け取った。
「ありがとう」
そう言って笑顔で車に乗り込み、そのまま帰っていった。
残された私たちは何とも言えない空気になった。
娘の百日祝い。
本来なら幸せな思い出になるはずの日だった。
それなのに今でも思い出すのは、義姉の
「え?なんでうちの分のお膳がないの?」
という言葉だ。
出産祝いはくれない。
手ぶらで押しかける。
招待もされていない。
それでも食事は当然、引き出物も当然。
あの日ほど「図々しい」という言葉がぴったりな人を見たことはない。