職場結婚している夫婦がいた。
最初は本当に何とも思っていなかった。
でも、同じ部署で働くうちに、その夫の方が気になり始めた。
仕事ができるし、話も面白い。
何より、私が話しかけると嬉しそうに笑う。
既婚者だということは分かっていた。
でも私は思った。
「結婚したからって、好きになっちゃいけないわけじゃないよね」
それが始まりだった。
休憩時間に話しかける。
飲み会では隣に座る。
奥さんがいる前でも普通に冗談を言う。
夫の方も嫌がるどころか楽しそうだった。
LINEも交換した。
最初は仕事の話だけ。
でも次第に雑談が増えた。
夜に連絡することもあった。
私は確信していた。
この人は私に好意を持っている。
そして奥さんも気付いていた。
ある日、私が夫と話していると、奥さんが露骨に不機嫌な顔をした。
正直、少し優越感があった。
余裕がないんだなと思った。
その後、上司から呼び出された。
「少し距離感を考えた方がいいかもしれないね」
やんわりした注意だった。
でも私は全く気にしなかった。
だって会社では私の方が評価されていたからだ。
女性社員とも仲が良い。
上司ともよく話す。
仕事だって頑張っている。
一方で奥さんは女性グループに入れていなかった。
私は本気で思っていた。
会社が味方するなら私だと。
だからアプローチをやめなかった。
むしろ加速した。
「離婚したら付き合えるよね」
そんな話を遠回しにすることもあった。
肉体関係さえ持たなければ問題ない。
私はそう考えていた。
ところが数か月後。
状況は突然変わった。
まず人事から面談の連絡が来た。
内容は想像していたものと違った。
私は奥さんが騒いでいるだけだと思っていた。
しかし人事が問題にしていたのは不倫ではなかった。
職場環境だった。
「複数の社員から相談が来ています」
そう言われた瞬間、頭が真っ白になった。
私は驚いた。
だって皆、普通に接していたから。
味方だと思っていたから。
ところが実際は違った。
私が既婚者に近づいていること。
職場で必要以上に親しくしていること。
部署の空気が悪くなっていること。
全部見られていた。
誰も面と向かって言わなかっただけだった。
さらに衝撃だったのは夫の態度だった。
私は味方してくれると思っていた。
でも彼は人事の聞き取りでこう答えたらしい。
「私は特別な関係ではありません」
「誤解されるような行動があったなら反省しています」
つまり全部距離を取ったのだ。
私は信じられなかった。
あれだけ楽しそうに話していたのに。
あれだけLINEを返してきたのに。
結局、家庭を失う覚悟など最初からなかったのである。
その後、彼は奥さんとの関係を修復した。
異動になったのは私だった。
会社を辞めることはなかった。
だが居心地は最悪だった。
誰も露骨には責めない。
それが逆につらかった。
私はようやく理解した。
職場は恋愛ドラマの舞台じゃない。
会社が見ているのは好き嫌いでも人気でもない。
仕事に余計な問題を持ち込む人かどうかだ。
あの時の私は、
「みんな私の味方」
だと思っていた。
でも本当は違った。
みんな静かに距離を取っていただけだった。
そして最後に残ったのは、
手に入ると思っていた男でも、
勝ったと思っていた優越感でもなく、
自分で壊してしまった居場所だけだった。
※ネット上の体験談・掲示板投稿をもとに再構成。