震災で家を失った親戚を、父は迷わず家に招き入れた。
最初は「落ち着くまでの数週間だけ」という話だった。
しかし、叔父一家は一か月たっても、三か月たっても出ていかなかった。
食費も光熱費もこちら持ち。
母が遠回しに「そろそろ今後のことを考えたら」と言っても、叔父は笑って流した。
「親戚なんだから助け合いだろ」
その言葉を盾に、家の中で好き勝手に振る舞うようになった。
私は自分の部屋を奪われ、母は毎日人数分の食事を作り、父だけが黙って耐えていた。
だがある夜、父は静かに言った。
「この家を出る」
私たちは叔父一家には何も知らせず、密かに引っ越し先を決めた。
そして引っ越し当日。
業者が荷物を運び出すのを見て、叔父が怒鳴った。
「そんな話は聞いてないぞ!」
父は振り返りもせず、淡々と言った。
「家族にしか話してませんから」
叔父の顔が一瞬で固まった。
父は続けた。
「一年近く居座っておいて、まだ自分たちを客だと思っていたんですか」
その日、私たちはようやく自分たちの家族の時間を取り戻した。