
若い女性が、ほっそりした赤ちゃんを抱えて小児科に入ってきた。
赤ちゃんは元気そうだったが、母親の顔は不安でいっぱいだった。
「先生、どれだけ食べさせても全然太らないんです。どこか悪いんでしょうか?」
医師は赤ちゃんを見ながら、静かに質問した。
「母乳はあげていますか?」
母親は小さくうなずく。
「はい…あげてはいるんですが、なかなか太らなくて。」
医師はしばらく様子を見たあと、少し真剣な表情になった。
「では、上着を少し上げてもらえますか。」
「え? 上着ですか?」
戸惑いながらも母親が服を少し上げると、医師は胸の状態を確認した。
そしてすぐ、原因に気づいたように言った。
「母乳が、ほとんど出ていません。」
母親は驚いて言葉を失った。
「乳腺が詰まっていて、赤ちゃんが吸っても母乳が出ない状態です。
これでは、どれだけ飲ませても栄養が足りません。」
その言葉を聞いた瞬間、母親の目に涙が浮かんだ。
「私…赤ちゃんのために、ちゃんと母乳をあげてるつもりでした…。」
医師は優しく言った。
「お母さんのせいではありません。体の状態で、母乳が出にくくなることもあります。」
そして授乳の方法や、乳腺を改善する治療について丁寧に説明した。
「母乳だけにこだわらなくても大丈夫です。ミルクを併用して、赤ちゃんがしっかり栄養を取れることが一番大事です。」
母親は赤ちゃんを抱きしめながら、小さくうなずいた。
涙を拭きながら言った。
「この子が元気に育つなら、何でもします。」
医師は静かに微笑んだ。
赤ちゃんにとって一番必要なのは、
完璧なお母さんではなく――
自分を責めながらでも、必死に守ろうとする
その腕のぬくもりなのだから。