息子の就職活動が始まった頃の話だ。
ある日、妻が何気なく言った。
「お父さんの会社、人を募集してるんでしょ?入れてもらえば?」
すると息子は即答した。
「絶対に嫌」
私は思わず聞き返した。
「なんでだ?うちの会社そんな悪くないぞ?」
年間休日120日以上。
賞与あり。
転勤なし。
残業も少なめ。
正直、かなり働きやすい会社だと思う。
ところが息子は真顔で言った。
「駅から徒歩10分だから」
私は一瞬意味が分からなかった。
「いや、10分だぞ?」
「そうだよ。遠すぎる」
息子は本気だった。
私は思わず笑った。
「お父さんなんか若い頃、駅から会社まで25分歩いてたぞ」
すると息子は驚いた顔をした。
「えっ!?毎日?」
「毎日だ」
「罰ゲームじゃん…」
今度は私が驚いた。
さらに息子は続ける。
「夏は暑いし、冬は寒いし、雨も降るじゃん」
「そりゃ降るだろ」
「それを毎日10分往復したら20分だよ?」
「そうだな」
「年間だと何十時間?」
急に計算し始めた。
そして一言。
「その時間、寝てたい」
妻は吹き出した。
私は呆れながらも少し感心した。
休日や給料より、
毎日の快適さを重視する。
どうやら今の若い世代はそういう考えらしい。
結局、息子は駅直結の会社へ就職した。
後日、私は聞いてみた。
「やっぱり徒歩10分は無理だったか?」
すると息子は笑いながら言った。
「お父さんの会社が嫌なんじゃない」
「お父さんの時代が強すぎるだけ」
私は思わず笑ってしまった。
確かに、年間休日120日を喜ぶ父親と、徒歩10分を嫌がる息子。
同じ親子でも、価値観はずいぶん違うらしい。😅