息子の手術のために病院へ急いでいた私は、待合室で医師を待っていた。
約束の時間を大幅に過ぎても、担当医は現れない。
時計を見ながら苛立ちが込み上げ、ついに私は受付に声をかけた。
「先生、まだですか?手術が遅れています」
すると、担当医が息を切らせてやって来た。
顔には汗、手には書類が山積み。
私の怒りが頂点に達した瞬間、医師は低く頭を下げた。
「申し訳ありません…遅れてしまいました」
理由を尋ねると、彼の声には切実さが混じっていた。
「病院に来る途中、別の救急患者さんが車で搬送され、どうしても手術を優先させる必要がありました」
私は一瞬、怒りが止まった。
目の前の医師は、私の息子だけでなく、他の命も同時に背負っていたのだ。
その後、医師は手際よく手術を始め、息子は無事に麻酔から覚めた。
病室に戻った私は、医師の真剣な表情を思い出し、ただ静かに感謝の気持ちが湧いてきた。
怒りの裏には、思いやりや責任感が隠れていたことを知った瞬間――
私の胸の中に、尊敬と安堵が同時に押し寄せたのだった。