出産直後の病室は、静けさと疲労が入り混じった独特の空気に包まれていた。私は初めての育児に不安を抱えながらも、「授乳の時間になったら呼びますね」と助産師に言われ、その言葉を信じて身を任せていた。
しかし、半日が経っても誰も来ない。隣のベッドでは次々と新生児室へ向かう母親たちが呼ばれていくのに、私だけが取り残されているような違和感が募っていった。
不安が限界に達した私は、意を決してナースステーションへ向かった。
「すみません、授乳の案内がまだ来ていないのですが……」
すると、助産師の顔が一瞬こわばった。そしてカルテを確認した後、信じられない言葉を口にした。
「え……こちらの記録では、お子さんはすでにNICUに移っています」
一瞬、頭が真っ白になった。
何も聞かされていなかった事実。私はただ“呼ばれるはずの授乳”を待ち続けていたのだ。
その後すぐに説明がなされ、赤ちゃんは出生直後から経過観察のため集中管理に入っていたことを知った。
連絡の行き違いが重なり、私の病室には一切情報が届いていなかったという。
胸の奥が締め付けられるような思いのまま、私はようやく面会へと案内された。ガラス越しに見る小さな命は、思っていたよりもずっと力強く、静かに呼吸を続けていた。