フードコートは昼どきになると一気に人で溢れ、空席を見つけるのも難しいほどだった。私はようやく確保した席で、急いで買った食事をまだ食べている最中だった。
そのとき、背後から強い声が飛んできた。
「すみません!8人いるので、そこ譲ってもらえますか?」
振り返ると、同年代のママたちの集団が立っていた。子ども連れで、確かに人数は多い。しかし私はまだトレーを前にしており、食事はほとんど手を付けたばかりだった。
「まだ食べている途中なんですが……」
そう答えると、先頭の女性は表情を崩さず、さらに語気を強めた。
「すみません!耳聞こえないんですか!?」
その言葉が刺さった瞬間、胸の奥で何かが切れたような感覚がした。周囲の視線も集まり、空気が一気に重くなる。
私は静かに箸を置き、ゆっくりと彼女たちの方を見た。
そして、落ち着いた声で言った。
「聞こえています。ただ、ここは公共の場所で、食事中の席を強引に譲るルールはありません」
一瞬、ママ集団の動きが止まる。
私はさらに続けた。
「もし本当に必要なら、店員さんに空席の確認をお願いしてください。順番は守るべきです」
その場にいた店員が気づき、すぐに間に入り、別の空席を案内し始めた。
ママたちは気まずそうに視線をそらしながら、その場を離れていった。
私は再び食事に戻ったが、フードコートの喧騒の中でも、その一瞬だけ空気がはっきりと変わったのを感じていた。