新婚初夜、夫の健人は甘い言葉ではなく、真顔でこう言った。
「これから生活費は全部、きっちり折半にしよう」
私は一瞬、耳を疑った。
このマンションの頭金五千万円は、私の両親が土地を売って用意してくれたお金。内装費も家具代も、結婚式費用も、私は黙って半分以上負担してきた。
それなのに登記は夫の名前だけ。
そして今さら、食費も光熱費も生活用品も五十パーセントずつ出せと言う。
その瞬間、私は悟った。
これは公平ではない。私を都合よく使うための計算だ。
けれど、私は怒鳴らなかった。
ただ静かに微笑んで答えた。
「ええ、異論はないわ」
翌朝、私は夫の前に分厚い計算書を置いた。
住居費、家具の減価償却費、家事労働の時給、洗剤やトイレットペーパーの使用料、コーヒー一杯の材料費まで、すべて記録するルールを作った。
「折半したいなら、全部きっちり半分にしましょう」
得意げだった健人の顔から、みるみる血の気が引いていく。
彼が欲しかったのは公平ではなく、自分だけが得をする仕組みだったのだ。
新婚生活の始まりに、私は夫の本性を知った。
そして同時に、もう二度と自分の愛と信頼を安く扱わせないと決めた。