雨の夜、閉店間際のたこ焼き屋に、ボロボロの少女が立っていた。
小さな手には、たった1枚の5円玉。
「たこ焼き1つくだしゃい。お母しゃんにあげたいの」
寝込んだ母の誕生日に、好物を食べさせたかったのだ。
廃業寸前の店主は、黙って5円玉を受け取った。
そして鉄板に火を入れ直し、焼き立てのたこ焼きを30個包んだ。
「ちゃんとお金払ったんや。堂々と持って帰り」
少女は泣きながら走っていった。
それから10年。
店主がついに閉店の張り紙を書こうとした時、若い女性が現れた。
手には、色あせた小さなお守り袋。
中から出てきたのは、あの日の5円玉だった。
「おじちゃん、ただいま」
かつて助けた少女は、その味に救われて生きていた。
そして今度は、消えかけた店を救うために帰ってきた。