私の誕生日の夜、夫が珍しくケーキを買って帰ってきた。
驚きながら席につくと、九歳の息子が私の耳元でそっと言った。
「ママ、それ食べたら死ぬよ」
あまりに唐突で息をのんだが、息子の目は冗談ではなかった。
夫がコーヒーを入れにキッチンへ立つと、息子は素早く私と夫の皿を入れ替えた。
戻ってきた夫は何も気づかず、自分の皿のケーキを食べ始める。
私と息子も様子を見ながら少しだけ口にした。
すると十分もしないうちに、夫は突然苦しみ出し、泡を吹いて倒れた。
私は震えながら救急車を呼び、息子は冷静に夫の口の中のものを吐き出させた。
搬送後、息子はゴミ箱から「強力パウダー」と書かれた袋を見つけ、危険な成分だと調べていたことを話した。
さらに夫の書斎を探し、細かいメモの残る手帳まで見つけた。
そこには粉の量や効き目だけでなく、すでに義父に同じ方法を使った記録まで残っていた。
しかも次は私の誕生日に実行すると書かれていた。
夫だけでなく義母まで共犯だったのだ。
私は息子と協力して証拠集めを始めた。
義母を見張ると、怪しい店で白い粉を買っていた。
その中身を調べてもらい、後日、退院した夫と義母を家に迎えた。
食卓には料理と一緒に、例の粉によく似た白い粉を置いておいた。
二人はそれを見た瞬間、顔色を変えた。
私は検査結果と手帳のコピーを突きつけた。
追い詰められた夫と義母は、義父も私も邪魔だったと自白した。
だが夫は証拠を燃やしてごまかそうとする。
その時、息子が静かに言った。
「それコピーだよ。今の会話も全部録音してる」
私はその場で警察に通報した。
夫と義母は泣いて土下座したが、もう遅かった。
二人は逮捕され、私は離婚した。
今は息子と二人で新しい生活を始めている。
あの夜、私を守ってくれた小さな息子こそ、私にとって何より大きな希望だった。