「じゃあ母さん、とりあえず三百万円用意できるまで毎日弁当よろしくな。嫌なら、もうさち子にも会わせないから」
長男の徹也にそう言われ、私は孫のさち子のためだけに耐えていた。
私は72歳のはみ。
去年夫を亡くし、今は一人暮らしをしながら、縁のある介護施設を手伝っていた。
そんなある日、長男一家が突然近所に引っ越してきた。
事業に失敗し、金に困っているという話だった。
私は頼まれるまま五十万円を貸したが、それから徹也は毎日のように金と食事を要求し、とうとう毎朝三時起きで一家三人分の弁当を作って届けろと命じてきた。
断れば絶縁、さち子にも会わせないと言われ、私は睡眠不足でふらつきながらも我慢していた。
だが一か月後、さち子が一人で来て泣きながら真実を打ち明けた。
引っ越してから中学に通わせてもらえず、年齢を偽ってバイトを掛け持ちさせられ、稼ぎはすべて徹也に取られていたのだ。
しかも私の家の権利書を盗み、私を認知症扱いして施設に入れ、財産を奪う相談までしていたという。
私はとうとう我慢の限界を超えた。
すぐに調査を依頼し、証拠を集めた。
そして「まとまった金ができた」と徹也たちを喫茶店に呼び出した。
封筒を奪った徹也が中を開けると、入っていたのは現金ではなく請求書だった。
私は、徹也が風俗通いで借金を重ね、共同事業者の天堂さんの三百万円を持ち逃げし、さらにサラ金にも手を出して夜逃げした事実を突きつけた。
そこへ天堂さん本人も現れ、店の外には警察が待機していた。
徹也は観念し、連行された。
一方、のり子もロマンス詐欺に遭い、徹也とは離婚。
頼る相手もなく転落していった。
その後、私はさち子と一緒に暮らすことを決めた。
家と土地を売り、白峰学園の近くに引っ越し、転校と受験を支えた。
さち子は努力の末、憧れの白峰学園に合格した。
今、さち子は夢に向かって学び、友人に囲まれて笑っている。
その姿をそばで見守れることが、私にとって何よりの幸せだ。