「助けになれば」と全部買った芋がほぼ腐っていた——その場で割った瞬間、相手の顔が変わった
2026/03/30

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「“自家栽培です”と売っていたさつまいもを買って帰ったら、切った瞬間ほとんど全部が黒く腐っていた。」

一本じゃなかった。

何本切っても同じだった。

……は?

助けになればと思って全部買ったのに。

嫌な予感がして戻ると、

その人はまだ同じ場所で売っていた。

そして——

私はその場で、芋を割った。

ぱきっと割れた断面は、真っ黒だった。

やっぱりか、と思った。

「中、全部こんな感じです」

周りにいた人が、思わず覗き込む。

「あ…ほんとだ」

小さな声が漏れた。

私はもう一本取り出して、割る。

また黒い。

さらにもう一本。

やっぱり同じだった。

空気が、少し変わった。

さっきまで普通だった通りが、

急に静かになる。

おじいさんは何も言わない。

でも、表情は明らかに変わっていた。

その時、隣で買おうとしていた人が手を引っ込めた。

「それはちょっと…」

その一言で、流れが完全に変わった。

おじいさんが低い声で言った。

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「そんなことないよ」

でも、その声にはさっきの余裕はなかった。

私は袋を軽く持ち上げた。

「じゃあ、これどうします?」

少しの沈黙。

そして、

「……返すよ」

そう言って、ポケットからお金を出してきた。

「ほら、これでいいだろ」

その顔は、

さっきとはまるで違っていた。

少し苛立ったような、面倒そうな表情だった。

「もう来なくていいからな」

「商売の邪魔すんな」

その言い方に、

胸の奥が少しだけ引っかかった。

でも私は、そのお金を見て——

少し考えてから、首を振った。

「いえ、大丈夫です」

おじいさんが一瞬、動きを止める。

「いらないのか?」

私は静かに言った。

「お金はいらないです」

少しだけ間を置いて、続けた。

「でも、こういうの売るのはやめた方がいいと思います」

周りが、また静かになる。

私は続けた。

「買う人、信じて買ってますよ」

「悪い人じゃないです」

おじいさんは何も言わなかった。

ただ、少しだけ視線を落とした。

それ以上、何も言わなかった。

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私はその場を離れた。

正直、スッキリしたかと言われると微妙だった。

でも——

あのまま黙っていたら、

もっと嫌な気持ちが残っていたと思う。

それからしばらくして、

同じ場所を通った。

そこには、もう芋はなかった。

代わりに、小さなテーブルと、

色とりどりのおもちゃが並んでいた。

そして、

あのおじいさんがいた。

前より少しきれいな服を着て、

子どもに何かを説明している。

子どもが笑う。

おじいさんも、少しだけ笑っていた。

私はそのまま通り過ぎた。

たぶん——

あれでよかったんだと思う。

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