“見るだけ貸して”と言われた新品の給食エプロン、返ってきた時にはペットの毛だらけだった。
2026/05/21

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入学前の数日は、本当に慌ただしかった。

名前付け、書類、持ち物確認。

毎日やることだらけで、
気づけば夜になっているような状態だった。

そんな時、
同じクラスのママから突然メッセージが届いた。

「給食エプロンって学校で買った?」
「自分で安いの探したいんだけど、どんな感じか分からなくて…一式貸してもらっていい?」

言い方は丁寧だった。

困っている感じもあったし、
私は特に疑わなかった。

新品ではあったけど、
“見るだけ”なら問題ないと思った。

むしろ役に立てるならいいか、

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くらいの気持ちだった。

私はエプロン、帽子、袋まで、
全部きれいに畳んでセットにして渡した。

彼女は笑顔で言った。

「助かる〜!ほんとありがとう!」

その時は、
まさかこんな嫌な気持ちになるなんて思っていなかった。

翌日、
彼女は袋を返してきた。

ただ、受け取った時、
なんとなく違和感があった。

袋が少し膨らんでいた。

でも私は忙しくて、
その場では確認しなかった。

夜になって、
子どもの持ち物を整理していた時だった。

私は袋を開けた。

その瞬間、

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手が止まった。

中に入っていたのは、
私がきれいに畳んで渡した状態とは、
まるで別物だった。

エプロンはぐしゃぐしゃ。

無理やり押し込まれたように丸まっている。

帽子も潰れて、
形が崩れていた。

そして何より、
目についたのが細かい動物の毛だった。

白っぽい毛が、
布全体にびっしり付いている。

私はしばらく固まった。

新品だった。

まだ一度も使っていない。

明日、
子どもが初めて使う予定だった。

それを、
こんな状態で返されるなんて思わなかった。

正直、
その場でLINEしようと思った。

でも一度深呼吸して、
スマホを置いた。

感情のまま送ったら、
きっと後悔すると思ったからだ。

ただ、
モヤモヤは全然消えなかった。

翌朝。

校門で彼女に会った。

彼女はいつも通り、
軽い感じで言った。

「昨日ありがとうね〜」

その瞬間、
私はもう流せなかった。

私はそのまま聞いた。

「見るだけって言ってたけど、
あれ、そのまま使ったよね?」

彼女の表情が一瞬止まった。

「え?いや、ちょっと確認しただけで…」

私はスマホを取り出し、
昨夜撮った写真を見せた。

「これ、返ってきた時の状態なんだけど」

そして続けた。

「あとこれ、ペットの毛だよね?」

彼女の顔色が変わった。

周囲にいた保護者たちも、
なんとなくこちらを見る。

彼女は小さな声で言った。

「たぶん…ついちゃったのかも…」

その言い方に、
また少しイラッとした。

“仕方なかった”みたいな言い方だったから。

私は落ち着いた声で言った。

「借りた物って、
元の状態に戻して返すのが普通じゃない?」

「新品で、
今日が初めて使う予定だったんだけど」

そこまで言うと、

彼女は完全に黙った。

近くにいたママの一人が、
小さくつぶやいた。

「それはちょっとね…」

空気が変わった。

彼女はしばらくして言った。

「じゃあ洗って返そうか」

でも私は即答した。

「大丈夫。
もういいから」

そして続けた。

「今後は貸さない」

それだけ言って、
私はその場を離れた。

歩きながら、
少し手が震えていた。

でも不思議と、
気持ちは軽かった。

我慢しなかったことを、
後悔していなかったからだ。

その日の夜、

保護者グループでこんな話題が出た。

「借りた物はちゃんと返さないとね〜って、今日話題になってたね」

名前は出ていない。

でも、
誰のことか分かる人には分かる内容だった。

彼女は何も発言しなかった。

それから数日後。

周囲の雰囲気が、
少しずつ変わっていった。

以前は普通に話していた人たちが、
なんとなく距離を取るようになっていた。

後から別のママに言われた。

「あの人、前からそういうところあるよね」

「いろいろ聞いてきたり、
頼んできたり、
それが当たり前みたいな感じで」

その時、


私はやっと腑に落ちた。

——今回だけじゃなかったんだ。

ただ、
今までは誰も言わなかっただけ。

私はたまたま、
そこで線を引いただけだった。

それ以来、
彼女から何かを頼まれることはなくなった。

私も、
無理に関わろうとはしていない。

怒っているわけじゃない。

ただ、
“ここまではOK”
“ここから先は無理”

その線を、
はっきり引いただけだった。

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