“気にしすぎ”と言われた黒い斑点のアジを食べた30分後、私は床を這っていた。
2026/05/21

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3月8日。

その日はWBCの試合があった。

私は家でゆっくり観戦しようと思い、
近所のホットモットで海鮮天丼を2つ買った。

熱々の天ぷらをつまみながら、
試合を見る。

そんな普通の夜になるはずだった。

異変に気づいたのは、
アジの天ぷらを食べようとした時だった。

なんとなく違和感があった。

説明しにくい。

でも、
「なんか変だな」と思った。

私は箸で衣を少し剥がした。

すると、
魚の身の表面に黒い丸い斑点が見えた。

一瞬、
手が止まった。

「……なにこれ?」

どう見ても普通じゃない。

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腐敗?
寄生虫?
焦げ?

嫌な想像ばかり浮かぶ。

私は気味が悪くなり、
その場で店に電話した。

事情を説明すると、
電話に出た店員はあっさり言った。

「それはうちの特色なんです。」

意味が分からなかった。

私は聞き返した。

「特色?」

すると店員は少し面倒くさそうに言った。

「向こうでは普通の作り方なんですよ。」

さらに、
少し笑うような声で続けた。

「気にしすぎじゃないですか?」

その言い方が妙に自信満々で、

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私は逆に迷ってしまった。

「そういうものなのかな……」

半信半疑のまま、
私はそのアジを食べてしまった。

——これが完全に間違いだった。

食後、
私は風呂に入った。

その瞬間だった。

突然、
体がゾクッと震えた。

寒気。

異常なレベルの寒気。

次の瞬間、
手足がビリビリ痺れ始めた。

「え……?」

立とうとしても、
足に力が入らない。

嫌な予感が一気に膨らんだ。

急いで布団に入ったが、
症状はどんどん悪化した。

吐き気。

めまい。
震え。

視界まで揺れてくる。

私はトイレへ向かおうとした。

でも、
立てなかった。

足が動かない。

私は床を這った。

本当に、
腕だけで体を引きずるようにして、
トイレまで進んだ。

便器に辿り着いた瞬間、
限界だった。

私は指を喉に突っ込み、
無理やり吐いた。

一回。

二回。

三回。

四回。

吐き終わったあと、
少しだけ呼吸が楽になった。

でも、

震えは止まらない。

私は悟った。

——これは普通じゃない。

震える手で119に電話した。

数分後、
救急車が来た。

そのまま病院へ搬送。

高熱。
下痢。
手足の痺れ。

医師は首をかしげながら言った。

「断定はできませんが、
魚が関係している可能性はあります。」

その瞬間、
頭に浮かんだのは、
あの黒い斑点だった。

実は、
衣を剥がした時、

嫌な予感がして写真を撮っていた。

レシートも残していた。

退院後、
私は店に再び連絡した。

事情を説明したが、
反応は冷たかった。

「うちの商品に問題はありません。」

つまり、
こちらを信じていない。

私は静かに言った。

「写真、撮ってあります。」

黒い斑点の写真。
レシート。

それを送った瞬間、
電話の向こうが黙った。

数日後。

今度は店ではなく、
保健所から連絡が来た。

「商品の調査を行います。」

さらにその後、

本部から電話が入った。

そして最後に、
店長本人から連絡が来た。

最初の店員とは、
まるで別人のような声だった。

「この度は本当に申し訳ありませんでした。」

深く謝罪され、
医療費のことまで気遣う言葉が続いた。

私は少し黙ってから答えた。

「もう二度と行きません。」

電話を切ったあと、
数日ぶりにその店の前を通った。

昼時なのに、
店の中は妙に静かだった。

前は昼になると、
外まで人が並んでいたのに。

今は、

客がほとんどいない。

中を覗くと、
客が一人もいない日もあると聞いた。

私は、
あの日の言葉を思い出した。

「それはうちの特色なんです。」

「向こうでは普通の作り方なんですよ。」

「気にしすぎじゃないですか?」

でも今なら、
はっきり言える。

あれは、
“特色”なんかじゃない。

ただ、
客を舐めていただけだった。

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