父の急逝により、私は会社を継いで社長に就任した。悲しむ間もなく責任を背負った私に、古参課長の今野は「女が社長とかこの会社は終わりだ」「お前の下では働かない」と公然と噛みついてきた。さらに「社員の半分を連れて独立する」と豪語し、会社のパソコンや顧客名簿まで持ち出して得意になっていた。
だが、私は慌てなかった。以前から今野の帳簿改ざんや不自然な経費処理に気づき、水面下で横領の証拠を集めていたからである。私は退職をあっさり認めたうえで、最後に静かに告げた。
「ところで、横領したお金はいつ返していただけますか?」
その一言で、今野の顔色は一変した。彼が持ち出した顧客名簿は問題顧客ばかりの一覧、パソコンも処分予定の旧型で、実際には会社にとって痛手でも何でもなかった。案の定、独立した会社はすぐに資金繰りに詰まり、社員も回せず、経営破綻したという。
人を見下し、自分こそが上だと思い込んでいた男は、最後に自分の無能さだけを世間に晒す結果となったのである。