橋の上で妙な張り紙を見つけた。
「3/12 8764レ(草津回)
場所取り 鉄1名
和動禁止」
要するに、「ここは俺の撮影場所だから動くな」という意味だ。
ここは駅近くの歩道橋。誰でも通れる完全な公共の場所である。
なのに、まるで私有地のように紙がテープで貼られていた。
思わず笑ってしまった。
「いや、何様だよ…」
撮り鉄が場所取りする話は聞いたことがあるが、公共の場所を堂々と“予約”する張り紙は初めて見た。
私は写真を撮り、そのまま紙を剥がした。理由は単純。公共の場所に無断で張り紙をするのはルール違反だからだ。
その時、後ろから声が飛んだ。
「ちょっと!!それ俺の紙なんだけど!」
振り向くと、三脚を担いだ男が怒った顔で立っていた。
「場所取りしてたんだよ!先に貼ったんだ!」
私は答えた。
「ここ歩道橋ですよ。誰のルールですか?」
男は言い返した。
「撮り鉄の常識だよ!」
私は即答した。
「いや、世間の非常識です」
周りから小さな笑い声が漏れた。
通行人も「公共の場所だしね」と口を挟む。
男は完全に孤立した。
それでも「じゃあどこで撮ればいいんだよ」と言う。
私は橋を指さした。
「普通に来た順で撮ればいいだけです」
男は黙り込み、結局端の方へ三脚を立てに行った。
私は軽く会釈してその場を離れた。
歩きながら思った。
撮り鉄が問題なのではない。
問題なのは、一部の人の**“俺ルール”**だ。
今日はただ紙を一枚剥がしただけ。
それだけで、橋の上の空気は少しまともになった。