夫が土下座しながら頭を下げる。「お願いだ、離婚してくれ…20歳年下の彼女が妊娠したんだ」
私は冷静に書類を手に取り、机の上に置いた。手が震えることもなかった。「はい、離婚届け」とだけ言った。
夫が慌てて食い下がる。「は?長男も連れていけよ!」
私は一瞬、彼の顔を見つめた。そして、はっきりと言った。「それは無理。だってこの子は私の子、あなたの都合で手放すものじゃないの」
部屋の空気が一瞬にして凍りついた。土下座していた夫は頭を上げ、言葉を失っていた。彼の背後にある自己中心的な要求と、私の揺るぎない決意が、静寂の中でぶつかり合った瞬間だった。
私はさらに条件を突きつけた。「長男以外の財産、慰謝料、養育費、全部書類に明記。これが守れないなら離婚は成立しません」
夫はもがくように言葉を探すが、私の目の前で何も言えなくなった。静かな決意、冷徹な理性、そして母としての強い覚悟。私の態度は、彼の甘い逃げ場を完全に奪ったのだ。
その日、私はただ書類にサインをして立ち上がった。夫はまだ土下座の姿勢のまま、何もできずに固まっていた。
私は知っている。この瞬間こそが、私と長男の未来を守るために必要な戦いだったのだと。