先月、東京行きの新幹線で小さな騒動を見た。
斜め前の席に、就活中らしい若い女性が立っていた。
何度も切符と座席番号を見比べている。
理由はすぐ分かった。
その指定席に、見知らぬおじさんが座っていたからだ。
女性は勇気を出して声をかけた。
「すみません、その席…私の指定席なんですが。」
するとおじさんは面倒くさそうに言った。
「自由席満席だったからこっち来ただけだ。」
女性がもう一度説明すると、
おじさんはさらに態度を悪くする。
「うるせーんだよ。若いなら立ってろ。」
「それとも俺の膝に乗るか?」
車内の空気が一瞬で凍った。
しかし女性は怯まなかった。
「分かりました。」
静かにチケットを見せながら言った。
「この席は私が料金を払って購入しています。」
「もし動かないなら、不正占有として通報しますが、それでもよろしいですか?」
その瞬間、おじさんの顔色が変わった。
ちょうどそこへ車掌が来る。
状況を聞くと、おじさんは舌打ちしながら席を立ち、
そのまま別の車両へ消えていった。
車内の空気が一気に緩む。
女性は席に座り直し、周りに小さく頭を下げた。
「お騒がせしてすみません。」
すると隣のおばあさんが笑って言った。
「あなた、法律の勉強してるの?」
女性は少し照れて答えた。
「いえ…ただ、あまりに腹が立ったので。」
その後、新幹線は何事もなかったように走り続けた。
でもあの瞬間、
車内の全員が思ったはずだ。
席は――
声の大きい人のものじゃない。
ちゃんと払った人のものだ。