近所に住むママさんが、ある朝突然うちを訪ねてきました。
「どうしても今日だけ車を貸してください!」
かなり慌てた様子で、子どもの送迎と買い物が重なり、自分の車が使えないのだと言います。
私は最初、はっきり断るつもりでした。
他人に車を貸すことほど怖いものはありません。
すると彼女は、深々と頭を下げました。
「絶対に壊したりしません。もし故障させた場合には、代金を支払います」
何度もそう言われ、近所付き合いもあるため、私は仕方なく鍵を渡しました。
「一時間だけですよ。無理な運転はしないでください」
彼女は「もちろんです!」と笑顔で出ていきました。
しかし一時間後、戻ってきた車を見て、私は言葉を失いました。
助手席側のドアには大きな擦り傷。
バンパーはへこみ、サイドミラーも不自然な角度に曲がっていました。
「これ、どうしたんですか」
私が震える声で聞くと、ママさんは目をそらしました。
「ちょっと狭い道でこすっただけ。そんなに大げさに言わなくても……」
その瞬間、貸す前の言葉が頭に浮かびました。
私はすぐに修理工場へ見積もりを取り、金額を伝えました。
すると彼女は顔色を変えました。
「え、そんなにするの?近所なんだから少しは負けてよ」
私は静かに録音していた会話を再生しました。
そこには、彼女自身の声で「故障させた場合には代金を支払います」とはっきり残っていました。
結局、夫同士の話し合いにもなり、修理代は全額支払われることになりました。
それ以来、そのママさんは私を見ると気まずそうに目をそらします。
私はこの出来事で学びました。
どれだけ近所付き合いがあっても、簡単に貸してはいけないものがあるのだと。