朝、レンタカーを返却するために駐車場へ向かった。
空は快晴。
風は少し冷たい。
スマホで返却時間を確認しながら、私はタイムズの駐車場へ入った。
あと数分。
ギリギリだけど間に合う。
そう思っていた。
でも——
次の瞬間、私は足を止めた。
「……え?」
レンタカー返却専用スペース。
黄色い看板で「カーシェア専用」と大きく書かれた場所。
そこに、普通の一般車が停まっていた。
銀色の軽自動車。
しかも、めちゃくちゃ堂々と。
一瞬、見間違いかと思った。
でも違う。
どう見ても普通の車。
レンタカーでもカーシェア車両でもない。
私はその場でしばらく固まった。
いや、どうするのこれ。
返却スペースはここしかない。
他は全部埋まっている。
もし返却できなければ、延滞料金が発生する可能性もある。
しかも次に使う人にも迷惑がかかる。
私は車を降りて、問題の軽自動車を見た。
車内は無人。
周囲にも持ち主らしき人はいない。
ラインから大きくはみ出してるわけではない。
でも問題はそこじゃない。
“そこに存在してること”自体がアウトなのだ。
私は思わず黄色い看板を見た。
「カーシェア専用」
普通に書いてある。
むしろかなり分かりやすい。
なのに、なんで停める。
本当に意味が分からない。
私はスマホを取り出した。
一瞬、持ち主を探そうかとも思った。
でも、この時間に人なんてほとんどいない。
駐車場も静かだった。
仕方なく、管理会社へ電話する。
「レンタカー返却スペースに一般車が停まっていて、返却できないんですが…」
電話口の担当者も、少し困ったような声だった。
「確認いたしますので少々お待ちください」
私は車の横で待った。
その間も、時計だけが進む。
返却時間。
延滞。
次の利用者。
色んな言葉が頭をよぎる。
数分後、折り返しが来た。
どうやら持ち主と連絡がつき、移動してもらえるらしい。
私は思わず息を吐いた。
助かった。
でも同時に、ものすごくモヤモヤした。
いや、普通に考えて。
返却専用スペースに停める神経ってどうなってるんだ。
私は銀色の軽自動車を見つめた。
ほんの少し、黄色い看板を隠すように停まっている。
たぶん本人は、
「少しくらい大丈夫」
くらいにしか思っていない。
でも、その“少しくらい”を食らう側は本当に迷惑なんですよ。
しかも、こういう人に限って、自分が同じことされたら絶対キレる。
人間って不思議だ。
自分の都合になると、急に周りが見えなくなる。
しばらくして、持ち主らしき男性が小走りで現れた。
でも謝罪は軽かった。
「あー、すみません」
それだけ。
悪びれる様子もほとんどない。
私はその瞬間、ちょっと笑いそうになった。
この人、多分本気で“そこまで迷惑かけた”って感覚ないんだろうなって。
私は何も言わなかった。
もう早く返却したかったから。
無事にレンタカーを返却し、駐車場を出る。
空は朝よりさらに明るくなっていた。
トラブル自体は解決した。
でも最後に、心の中でだけ思った。
返却スペースは、返却専用なんですよ。