休日の夕方、私は彼に誘われて近所のファミレスへ向かった。付き合って一年ほど。最近少し会話が減っていたとはいえ、まさかその日が転機になるとは思っていなかった。
席に着いて注文を済ませても、彼はずっと無言だった。スマホを見るわけでもなく、ただ水の入ったグラスを見つめている。
「どうしたの? 喋りたくないの?」
私がそう聞いても、彼は何も答えない。料理が運ばれてきても、返事はない。私は気まずさをごまかすように食事を進めたが、向かいの沈黙は重くなるばかりだった。
食べ終わった頃、私はついに言った。
「私、食べ終わったし帰っていい?」
それでも彼は黙ったまま。もう無理だと思い、会計を済ませて店を出ようとした。その時、背後からようやく声がした。
「別れよう」
驚きより先に、心がすっと冷めた。
「オッケー」
それだけ答えて、私は振り返らずに店を出た。泣くことも、引き止めることもしなかった。長い沈黙の中で、もう十分答えは出ていたのだ。
それから十ヶ月後。彼から突然連絡が来た。
「やっぱり、お前が一番落ち着いた。やり直せないかな」
画面を見た私は、少しだけ笑ってしまった。あの日、私に向き合うこともせず、沈黙で終わらせた人が、今さら言葉を並べている。
私は短く返信した。
「もう大丈夫。私、今はちゃんと話してくれる人と一緒にいるから」
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥に残っていたわずかな重さまで消えた気がした。別れを告げられたあの日、本当に終わっていたのは恋ではなく、私が我慢していた時間だったのだ。