「早く弥生ちゃんのお迎えに来てください!」
仕事中、幼稚園から突然電話がかかってきた。
だが私は静かに答えた。
「……娘は一年前に亡くなりました」
先生は驚きながらも強く言った。
「冗談はやめてください。弥生ちゃんは園で待っています」
私は混乱しながらも幼稚園へ向かった。
そしてそこで――信じられない光景を目にする。
「……ママ?」
振り向くと、そこには弥生が立っていた。
私は思わず抱きしめた。体温も匂いも、すべて本物だった。
だがその瞬間、義母が現れ弥生を無理やり連れて行った。
園の先生の話によると、弥生はこの一年ずっと普通に登園していたという。
その夜、私は元夫の料亭へ向かった。
そこで見たのは、赤ん坊を抱いた女性と弥生を叱る義母だった。
女性は、入院中に弥生の世話を任されていた歩美だった。
すべて理解した。
夫は歩美と不倫し、跡取りの男の子を望んだ義母と共に、弥生を「死んだこと」にしたのだ。
弁護士とともに真実を突きつけると、料亭は大騒ぎになり、二人は観念した。
その結果、料亭は評判を失い廃業。元夫は離婚し、義母と貧しい生活を送ることになった。
そして私は――弥生を取り戻した。
今、弥生はもうすぐ小学生。
副編集長として働きながら、私は娘と穏やかな毎日を過ごしている。
あの日、幼稚園からの電話がなければ、私は一生娘を失ったままだった。
眠る前、弥生が聞いた。
「ママ、もうどこにも行かない?」
私は優しく答えた。
「もう絶対に離れないよ」