小さな女の子が、ポシェットを下げて花屋に入ってきた。
聞けば、お母さんの誕生日。
一人で花を買いに来たらしい。
花屋歴25年の私は、すぐに読めた。
予算はきっと500円。
高くても1000円。
カーネーションを一本選んで、リボンをつけて、少しおまけする。
手紙も書く。
お母さんは泣く。
20年後、引っ越しの時にその手紙が出てきて、また泣く。
私もたぶん泣く。
そこまで勝手に未来予想しながら、ピンクのカーネーションを手に取った。
「予算はいくらかな?」
女の子は迷わず言った。
「1万円」
私は思わず聞き返した。
「1万円?」
次の瞬間、ポシェットから本物の万札が出てきた。
私はカーネーションをそっと戻した。
「お嬢様、お花の組み合わせはこちらでよろしいでしょうか?」
涙の準備をしていた私は、一瞬で接客モードに切り替わった。