正月の朝、彼女はそう言って布団から起きようとしなかった。
俺は鼻で笑った。
「仮病だろ?どうせ寝正月したいだけじゃん。」
俺はそのまま新年会へ出かけ、途中でLINEを送った。
「一日中家にいるんだから、洗濯と掃除くらいやっとけ。夕飯も頼む。」
既読は付いたが返信はない。
「図星だから無視か。」
そう思って酒を飲み、夜になって帰宅した。
玄関を開けると、朝出た時と何も変わっていない。
「本当に何もやってねぇのか!」
怒鳴りながら寝室へ向かうと、彼女はまだ同じ姿勢で横になっていた。
「いつまで寝てるんだ!」
布団を勢いよくめくった瞬間、彼女は顔をゆがめて悲鳴を上げた。
「触らないで…!」
その声があまりにも苦しそうで、さすがに様子がおかしいと思った。
顔は真っ青。額には冷や汗。
慌てて救急相談に電話すると、「すぐ受診してください」と言われ、そのまま病院へ。
診断は重度のぎっくり腰。
医師はレントゲンを見ながら俺に言った。
「この状態で家事ですか?立ち上がるだけでも激痛ですよ。無理に動けば悪化して入院になることもあります。」
俺は言葉を失った。
帰宅後、彼女は静かにスマホを差し出した。
そこには俺が送ったLINE。
「家事くらいやっとけ。」
その下には、送ろうとして消したまま残っていた文章が表示されていた。
「ごめん。本当に立てない。助けて。」
送信ボタンは押されていなかった。
「どうせ信じてもらえないと思ったから。」
その一言で胸が締め付けられた。
怒られたことよりも、痛みよりも、一番傷ついたのは恋人に仮病だと決めつけられたことだったのだ。