母が熱中症で倒れたと聞き、慌てて実家へ向かった。
部屋に入ると、母は布団の上でぐったりしていた。顔は真っ赤で、呼びかけにも反応が鈍い。
同居している兄嫁に事情を聞くと、返ってきたのはあまりにも冷たい言葉だった。
「何度言っても水も飲まないし、エアコンもつけないんです。最近はもう放ってます。」
「お義兄さんが帰ってきたら何とかするんじゃないですか?」
思わず耳を疑った。
「同居してるのに、この状態で放置してたの?」
そう問い詰めると、兄嫁はため息をつきながら言った。
「救急車だって何度も呼びました。そのたびに私たちが病院で頭を下げてるんです。もう限界なんですよ。」
その場では腹が立って仕方がなかった。
母は意固地な性格で、人の忠告を聞かず、暑い日でも庭仕事を続けてしまうことがある。それは私も知っている。
でも、だからといって放置していい理由にはならない。
すぐに救急車を呼び、母はそのまま入院となった。
病院で兄とも話し合い、私ははっきり告げた。
「もうこのままの同居は続けられない。」
実は兄夫婦が実家で暮らし始めたのは、「兄の仕事が決まるまで」という約束だった。
家は母名義。
家賃も払わず、兄嫁は「家事は私がやります」と約束していた。
しかし実際は、朝から晩までゲーム。
母に頼まれたことも「あとでやります」と言ったまま放置し、結局は高齢の母が炎天下で草取りや掃除をしていた。
兄が無職だった頃は兄自身が家のことをしていたため、熱中症で救急車を呼ぶようなことは一度もなかった。
約束が守られなくなってから、すべてが崩れ始めたのだ。
私は兄に告げた。
「10月から正式採用なんだから、約束どおり家を出て行って。もし住み続けるなら、この家は私が買い取って正式に家賃を払ってもらう。」
兄は慌てて引き止めようとしたが、もう遅かった。
介護は確かにきれいごとでは済まない。
何度言っても言うことを聞かない高齢者に疲れ果てる気持ちも理解できる。
だからこそ、最初に決めた約束や役割を守ることが大切なのだ。
「面倒を見る」と言って同居を始めた以上、その責任から目を背けることはできない。
今回の出来事で私が痛感したのは、家族だからこそ、善意だけでは同居は続かないという現実だった。